「デジタルミュージアム」は既に手垢のついた用語なのかもしれないが、普通に考えると、文化資源のデジタルコンテンツを掲載したホームページのことか、ミュージアムの機能をIT技術で実現ないし拡張したものか、という事になろう。前者を広義、後者を狭義としてもよいが、前者は後者と違う方向まで含んでしまう可能性がある。
狭義のデジタルミュージアムを語るには、ミュージアムの機能を把握していないといけない。しかしミュージアムの機能自体が論争の的になる。
2012年 07月 28日 地域博物館の使命
ここでは、1にアーカイブ、2にシンクタンク、3にライブラリーとした。3は「系統だった情報提供機能」が言いたかったことなので、展示も含む、幅広い意味である。
#後で気付いたが、4としてリファレンスを付け加えてもよいかと思う。問い合わせに答えられる機関という意味もあるが、リファレンスモデルというくらいで、地域の歴史・文化情報の「基準」を保持する機関という意味でもある。これは、すぐれて知的機能である。シンクタンク機能とかぶるが、ベクトルが異なるので、別にした方がよいかもしれない。
上述したような諸機能は私論であり、実際には社会教育施設か、ある種の知的娯楽施設、あるいは単純に「集客施設」という位置づけが強いようである。
「カルチャー」が知的娯楽として「消費」されるのを忌避するつもりは毛頭ないが(というか歓迎される)、ミュージアムの基本機能がそれだと思われるのは心外である。カルチャースクールなら、アーカイブ機能もシンクタンク機能も持つ必然性がない。集客機能に注目するのは構わないが、それを優先視されると、学芸員の士気が低下するか、あらぬ方向に行ってしまうだろう。
#殆どの学芸員は時に矛盾を感じつつも、使命を見失うとは考えにくい。問題は役所内の位置づけである。
利用者からみたミュージアム体験の質を問うのは、必要なことではあるが、「ニーズ」オリエンテッドなアプローチは、「正解」への近道とは思われない。