「報告書」電子化の目的は、考古情報の「共有化」ではない。共有化は、冊子体の報告書を出版する段階でも、理念としては既に実現している。ただ、利用しにくいだけである。電子化の目的は、「利用しにくい」を「利用しやすい」に変える事である。
そこでIT(ICT)の本質であるコンカレントエンジニアリング(CE)が生きてくるのだが、表面的には情報の構造化とロジスティクス(流通)に特徴が表れる。構造化はオブジェクト化に通じるが、データ化された情報が、メタデータを内蔵したり、一定の「書式」に沿う事で、ある意味モジュール化され、パーツ化される。この点を重視しないと、デジタル化がアナログ形態と変わらないものになってしまう。
実はCDやMD、DV(初期のデジタルビデオカメラのデータ形式)はデジタルでありながら、アナログに近い性質を持っていた。ただ、デジタルデータではあったため、データを抽出することはできたが(MDは無理かもしれない)、その作業がワンステップ必要になった。テキスト抽出の出来ないPDFを、OCRにかけてテキスト抽出するのも、似たような話であろう。
ロジスティクスは兵站とも言うが、データの蓄積や流通を、組織的かつ効率的に行うことを意味する。そこでインターネットの活用や、リポジトリの整備が課題になる。
機関リポジトリは、学術情報のロジスティクスの問題である。一般論として、そういうロジスティクスを無視する研究者はありえないが(資料収集は研究の第一要素だから)、ロジスティクスの変革をどう思うかは(以下略
「利用しにくい」も「利用しやすい」も多様な含意を持つ。説明のために具体例をあげていくと、そこに留まると誤解される可能性もあるが、CEの追求は道なき道なので、致し方ない。